数年前、念願のクロスバイクを手に入れた私は、毎日の通勤や週末のサイクリングを楽しんでいました。盗難対策はもちろん意識していて、そこそこ評判の良いワイヤーロックを購入し、駐輪する際は必ず鍵をかけていました。しかし、今思えばそのかけ方は非常に甘かったのです。ある日の仕事帰り、いつものように駅前の駐輪場に停めていたクロスバイクに乗ろうとしたところ、何か違和感を覚えました。ワイヤーロックが、いつもと違う不自然な角度で垂れ下がっていたのです。よく見ると、ワイヤーの被覆が一部剥がれ、中の金属線が数本切断されかかっていました。幸い、完全に切断されるには至っておらず、バイクは無事でした。しかし、誰かが私のバイクを盗もうとし、途中で諦めたか、あるいは誰かに見られて中断したであろうことは明らかでした。背筋が凍る思いでした。もし、もう少し発見が遅れていたら、あるいは犯人がもう少し粘り強く作業していたら、私の愛車は今ここになかったかもしれません。なぜ狙われたのか。原因は明らかでした。私の鍵のかけ方は、いわゆる「タイヤロック」のみ。前輪とフレームをワイヤーロックで繋いでいただけだったのです。しかも、駐輪場のラックには固定せず、いわゆる「地球ロック」を怠っていました。これでは、自転車ごと持ち去ることも、ワイヤーを切断することも比較的容易だったでしょう。さらに、使っていたワイヤーロックも、今思えばそれほど太いものではなく、プロの窃盗犯から見れば格好のターゲットだったのかもしれません。この盗難未遂事件は、私にとって大きな教訓となりました。それ以来、私は鍵のかけ方を根本的に見直しました。頑丈なU字ロックを購入し、必ずフレーム(後三角)と後輪、そして駐輪場のラックを繋ぐ地球ロックを徹底。さらに、サブとしてワイヤーロックを使い、前輪とフレームも固定するダブルロックを実践するようにしました。鍵をかける手間は増えましたが、あの日感じた恐怖と、愛車を失うかもしれなかったリスクを考えれば、当然のことです。この体験を通じて、油断と知識不足がいかに危険かを痛感しました。皆さんも、どうか他人事と思わず、ご自身の鍵のかけ方を今一度見直してみてください。