ツーリング先で鍵がない絶望と復活の記録


あれは忘れもしない、秋晴れの気持ちの良い週末でした。私は愛車の原付スクーターで、少し遠出して隣県の景色の良い湖までプチツーリングに出かけました。湖畔のカフェで休憩し、美しい景色を堪能。さあ帰ろうかとバイクに戻り、ポケットを探った瞬間、血の気が引きました。いつも入れている右ポケットに、鍵がないのです。ジャケットの他のポケット、ズボンのポケット、持っていた小さなショルダーバッグの中…考えられる場所を全て探しましたが、鍵は見当たりません。最後に鍵を使ったのは、カフェに入る前にエンジンを切った時。その時は確かにポケットに入れたはず…。カフェの店員さんに事情を話して、店内やテーブル周りも探させてもらいましたが、ありません。湖畔の道を少し戻ってみましたが、落ちている気配もなし。時刻は午後3時過ぎ。自宅までは50キロ以上あります。スマートフォンで「原付 鍵 紛失」と検索し、いくつかの鍵屋さんに電話してみました。しかし、ここは土地勘のない場所。現在地を正確に伝えるのも一苦労で、しかも出張費を含めるとかなり高額になることが分かりました。途方に暮れ、湖畔のベンチに座り込みました。なんでスペアキーを持ってこなかったんだ、なんでポケットのファスナーを閉めておかなかったんだ、と後悔ばかりが頭をよぎります。日が傾き始め、気温も下がってきました。このままでは帰れない…。半ば諦めかけた時、ふと、ある可能性に思い至りました。「もしかして、メットインの中…?」カフェに入る前、ヘルメットをメットインに入れる際に、無意識に鍵も一緒に入れてしまったのではないか? わずかな望みを託し、もう一度鍵屋さんに電話しました。今度は「メットインの解錠」をお願いできるか尋ねてみました。すると、メットイン解錠なら対応可能で、料金も鍵作成よりは安いとのこと。藁にもすがる思いで依頼しました。待つこと約1時間。到着した鍵屋さんは、手際よく特殊な工具でメットインを開けてくれました。そして、その中には…ありました! 思わず「あったー!」と叫んでしまいました。鍵屋さんに丁重にお礼を言い、料金を支払って、ようやく帰路につくことができました。あの時の安堵感と、自分の不注意への猛省は忘れられません。この経験以来、鍵の管理は以前にも増して徹底するようになりました。