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合鍵を作る前に知っておきたい基本
「合鍵をもう一本作りたい」。家族が増えたり、誰かに鍵を預ける必要ができたりと、暮らしの変化の中で、合鍵の作製を考える機会は誰にでも訪れます。街の鍵屋に行けば、数分で簡単に作れる。多くの人は、そのように考えているかもしれません。しかし、その手軽さの裏には、防犯上のリスクや、鍵の種類による制約など、事前に知っておくべき重要な点がいくつか存在します。まず、最も基本的なことですが、合鍵を作る際には、必ず「純正キー(元鍵)」を持って行くようにしてください。純正キーとは、家を建てたり、入居したりした際に、最初に錠前メーカーから提供された、オリジナルの鍵のことです。メーカーのロゴや、固有のキーナンバーが刻印されているのが特徴です。この純正キーから作られた合鍵は、精度が最も高くなります。一方、すでに一度コピーされた「合鍵」から、さらに合鍵を作ろうとすると、コピーの度に誤差が蓄積され、精度が著しく低下します。この精度の低い鍵を使い続けると、鍵穴を傷つけ、最終的には錠前(シリンダー)全体の故障を招く、深刻なトラブルの原因となります。次に、全ての鍵が簡単に作れるわけではない、という事実も知っておく必要があります。特に、近年の防犯性の高い「ディンプルキー」などは、メーカーによって厳格な所有者登録制度が敷かれており、専用のセキュリティカードや、身分証明書がなければ、メーカー以外では作れないようになっています。これは、不正な合鍵の流通を防ぎ、所有者の安全を守るための、非常に重要な仕組みです。合鍵を作るという行為は、単なる「モノ」のコピーではありません。それは、あなたの家の安全という、目には見えないけれど最も大切な価値に、直接関わる行為なのです。
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鍵交換の料金を左右するシリンダーの値段
鍵を紛失したり、防犯性能を高めたりするために、玄関の錠前(シリンダー)を交換する。その際にかかる料金の、大部分を占めるのが、新しいシリンダーそのものの「部品代」です。そして、この部品代は、あなたが、どのレベルの「安全性」を選ぶかによって、数千円から数万円まで、大きく変動します。シリンダーの値段とは、いわば「安心の値段」なのです。まず、最も安価な価格帯に位置するのが、昔ながらの「ディスクシリンダー」や「ピンシリンダー」です。鍵の側面がギザギザしているタイプで、部品代は数千円程度と非常に安いですが、ピッキングに対して非常に脆弱であるため、現在、防犯目的で、新たに取り付けることは、絶対に推奨されません。次に、現在の主流であり、防犯性とコストパフォーマンスのバランスに優れているのが「ディンプルシリンダー」です。鍵の表面に、大きさや深さの異なる複数の窪み(ディンプル)があり、内部の構造が非常に複雑なため、ピッキングによる不正解錠が極めて困難です。この複雑な構造ゆえに、部品代も一万円から三万円以上と高価になりますが、それに見合うだけの高い安心感を得ることができます。多くの鍵交換業者が、まず最初に提案するのが、このタイプです。さらに、より高度なセキュリティを求める方向けに、「ロータリーディスクシリンダー」というタイプもあります。これは、ディスクシリンダーの構造をさらに進化させたもので、内部のタンブラー(円盤)が回転することで、ピッキングを原理的に不可能にしています。こちらも、部品代はディンプルシリンダーと同等か、それ以上の価格帯になります。これらのシリンダー代に、業者に依頼する場合は、一万円から一万五千円程度の「作業料金」が加わります。どのレベルの安全を、いくらの投資で手に入れたいのか。それをじっくりと考えることが、シリンダー選びの第一歩なのです。